「イメージと違う」「修正」を減らす、ヒアリング設計|共通10問+ロゴ・印刷物の質問と回答の読み解き方
はじめに
「ヒアリングをちゃんとしたのに、なんでイメージと違うって言われるんだろう、、」
「一生懸命考えてデザインを作ったのに、『やり直してください』と言われてしまった、、」
そんな経験ありませんか?
私も制作会社に勤めていた頃は、同じことで何度も悩みました。
時間をかけて考えた案が通らないたびに、「私のデザイン力やセンスが足りないのかな」と落ち込んでいた時期があります。
「こんなこと聞いていいのかな、、」「『そういうことはデザイナー側で考えてよ』と思われないかな、、」と悩むこともありました。
でも、デザイナーとして実務を続ける中で、少しずつ気づいたことがあるんです。
提案後に大きなズレが起きる原因は、デザイン制作中ではなく、その前のヒアリングにあることが多い、ということです。
もちろん、制作過程で見えてくるものもありますし、ご提案後にお客様が気づくこともあります。
それでも、制作前に必要な情報をしっかり集めて、曖昧な部分をヒアリング段階でしっかりと確認することで、大きなやり直しは減らせます。
この記事では、私がロゴ・印刷物の制作で実際に使っている質問と、返ってきた回答をどう読み解いて、何を再度確認し、デザインの提案に繋げているかをまとめます。
ヒアリングが得意じゃない、聞くこと自体に苦手意識がある。
そんな方にこそ、「質問の型」を持っておいてもらえたらと思い書きました。
Web制作ではヒアリングの工程や確認事項が異なるため、Web制作については別の記事でご紹介しますね。
この記事を読むと、こんなことがわかります
- 修正回数が増える原因
- 修正地獄が起きる原因を、制作前に見つける考え方
- 「どんなテイストにしますか?」を聞かなくても、精度の高いヒアリングができる考え方
- 私が実際に使っている、ロゴ・名刺・チラシ/メニューに共通して使える10の質問
- 返ってきた回答を私がどのように読み解いているか
- 返ってきた回答が曖昧なときの、追加質問の作り方
- ヒアリングの回答を、デザインに落とし込む考え方
- 提案前に「イメージと違う」を減らす認識合わせの方法
質問をそのまま使えるだけでなく、各質問ごとに、返ってきた回答のどこを見て、何を追加で確認し、デザインの方向性へつなげるのかまで解説しています。
しかも今回は特典として、記事内で紹介する質問を実際の案件で使えるように、ヒアリングシートのダウンロードデータもお付けしています。


ただ質問をコピペするだけではなく、「なぜ聞くのか」「返ってきた回答のどこを見るのか」まで理解したうえで、ご自身のヒアリングに取り入れてもらえたら嬉しいです。
この記事が特におすすめの方
- ヒアリングに自信がない方
- スクールで教わった質問をそのまま使っている方
- ヒアリングシートは持っているけど、質問の意図まで説明できない方
- お客様の回答をそのまま受け取り、制作後にズレが起きることが多い方
- 修正のたびに、自分のデザイン力を責めてしまっている方
この記事でお伝えしたいのは、質問を丸暗記することではなく、自分が回答を読み解けるように質問を設計する考え方です。
質問に正解はありません。
私自身も、今のヒアリングシートに落ち着くまでに何度も聞き方を変えてきました。
なので、この記事の内容も「完成形」ではなく「今の私のやり方」として、気楽に読んでもらえたらと思います。
1. ヒアリングは、お客様を知ること自体がゴールではない
ヒアリングというと、「お客様のことを知る時間」「信頼関係を作る時間」というイメージを持っている方も多いと思います。
もちろん、それも大切です。
お客様が安心して話せる空気を作ることも、デザイナーの大切な仕事だと思います。
ただ、デザイン制作のヒアリングでは、お客様を知ること自体をゴールにしてはいけません。
私が考えるヒアリングの目的
ヒアリングは、お客様や事業、その先にいるお客様について知り、自分がデザインを作るための材料を集めるもの。
例えば、「休日はカフェや美術館に行くことが多い」という答えを聞いたとします。
その情報を「素敵ですね」で終わらせるなら、制作の材料にはなりません。
どんなお店を選ぶのか、どんな空間やブランドに惹かれるのかまで確認できると、その方が心地よいと感じる世界観を考えるヒントになります。
一方で、お客様の趣味や好みを、そのまま事業のデザインに反映すればよいわけでもありません。
事業主様本人の好みと、事業が届けたい相手に適した表現が異なることもあるからです。
ヒアリングでは、集めた答えをそのまま並べるのではなく、
- 事業主様が大切にしていること
- その先にいるお客様が求めていること
- 今回の制作物で達成したいこと
- 制作するうえで守る必要がある条件
に分けて読み取っていきます。
ヒアリングは会話を盛り上げるための質問時間ではなく、自分がデザインを考えるための材料を、過不足なく集める工程だと、私は考えています。
こう書くと少し事務的に聞こえるかもしれませんが、「雑談として聞く」から「材料を集めるために聞く」に頭を切り替えるだけで、ヒアリングの気まずさが減った、という感覚も個人的にはあります。
「何を聞けばいいか分からない」の多くは、実は「何のために聞くか」が自分の中で整理できていないだけだったりします。
2. 「イメージと違う」「修正」が起きる3つの原因
私は、提案後に大きな修正が生まれる原因は、大きく3つあると思っています。
原因1:デザインの判断を、お客様に委ねすぎている
ヒアリングで「どんなテイストがいいですか?」「何色を使いたいですか?」「どんなフォントが好きですか?」とお客様に聞き、その答えをそのまま制作条件にしていませんか?
もちろん、すでにブランドの方針が決まっている場合や、お客様が明確な希望を持っている場合は、確認しておく必要があります。
ただ、お客様はデザインの専門家ではありません。
突然「テイスト」や「フォント」を聞かれても、なんとなく思い浮かんだ言葉や、最近見たものから答えるしかない場合もあります。
本当に聞きたいのは、色や書体の名前ではなく、
- 誰に何を届けたいのか
- その方にどう感じてほしいのか
- 事業として、どのように見られたいのか
- どんな印象は避けたいのか
ということです。
その答えをもとに、どの色や書体、写真、余白の使い方が適しているかを考えるのは、デザイナー側の仕事です。
原因2:必要な情報が足りないまま、制作に入っている
もう一つは、制作に必要な情報が揃っていないことに、デザイナー自身が気づいていない場合です。
例えば、ターゲットを聞けていなければ、20代に届けるのか、40代に届けるのか分からないまま作ることになります。
チラシを置く場所を聞けていなければ、立ち止まって読んでもらえるのか、一瞬で興味を持ってもらう必要があるのか判断できません。
ロゴの使用場所を聞かずに進めると、完成後に「看板にも使いたい」「刺繍にもしたい」といった追加情報が出ると、ロゴの展開やそもそものデザインの向き不向きにも関わってきます。
デザイン力が足りないのではなく、判断に必要な材料が揃っていなかった。
実務では、そんなことも少なくありません。
だから私は、制作を始める前に「この回答だけで、自分は提案の理由を説明できるか?」を確認するようにしています。
説明できない部分があるなら、それはセンスで補う部分ではなく、もう一度クライアントに確認が必要な部分です。
原因3:ヒアリングをZoomなどオンラインで、その場の会話だけで完結させている
ヒアリングというと、Zoomなどのオンライン通話でその場で質問し、その場で答えてもらう形をイメージする方も多いと思います。
顔を見ながら話せるので、信頼関係を作るという意味ではもちろん良い面もあります。
ですが、ヒアリングを受ける側になって考えてみてください。
突然聞かれた質問に、その場で急に正確な答えを出せるでしょうか?
私だったら、ゆっくり考える時間が欲しいと感じますし、デザイナー目線でもとっさに答えていただいた内容だけでデザインを作るのは不安です。
なので私は、まずは聞きたい内容を先にお送りするようにしています。
スプレッドシートと画像で同じ質問をお送りして、スプレッドシートに慣れている方は該当の回答欄に答えを書いていただき、不慣れな方には画像を見ながら質問番号と答えをメールでお返事いただくようにしています。
とはいえ、どんな方なのかも知りたいし、私のことも知ってもらって安心して制作をお任せいただきたいので、認識のすり合わせの時点でZoomを使ってお打ち合わせをし、デザイン制作に入るという手順で進めています。
3. よくやる質問や行動の落とし穴
1:「どんなテイストにしますか?」
ヒアリングの定番になっている質問の一つが、「どんなテイストにしますか?」です。
これ、デザインスクールで聞くようにと教わったり、ヒアリングの定番みたいになっている質問だと思うんですが、実はここに大きな落とし穴があるんです。
例えば「ナチュラルな感じ」と一言で言っても、思い浮かべる色や書体、余白の使い方は人によって全然違いますよね。
淡いベージュを思い浮かべる人もいれば、木目や植物をイメージする人もいる。
しかも、お客様はデザイナーではありません。
「テイストは何が好きですか?」と聞かれても、的確に答えられる方の方が少ないんじゃないでしょうか。
つまりこの質問、答えてもらった時点で、もうズレが生まれる可能性を含んでいるんです。
だから私は、この質問をヒアリングシートから外しました。
私は、テイストそのものを決めてもらう代わりに、事業の背景、理想のお客様像、サービスを受けた後の変化、感じてほしい印象などを聞きます。
そして、返ってきた複数の答えからデザインの方向性を考えます。
2:デザイナーから参考画像を送る
参考画像をクライアントに送って、イメージのすり合わせをする。
これもデザインスクールで教えられる、ヒアリングからご提案までの定番だと思います。
でも私は、こちらから参考画像を送り「このようなイメージでいいですか?」と、最初から正解を決めるようなすり合わせは基本的にしていません。
一度具体的な画像を見せると、お客様の中でその画像が完成形に近いものとして印象に残ってしまいます。
またデザイナー側も、その画像に引っ張られて、本来ヒアリングで知り得た大切な情報やヒントを、デザインに反映しにくくなってしまいます。
ですが、参考画像を見ること自体を避けているわけではありません。
お客様からイメージ画像や気になるブランドが出てきた場合は、
その画像やブランドのどんなところを良いと感じるのか
を確認し、画像そのものではなく「どの要素に惹かれているのか」をデザインのヒントにします。
画像を正解にするのではなく、言葉と複数の情報から方向性を読み取る。 これが、私が大切にしている考え方です。
ここまでが無料公開部分です
ここから先では、私が実際にヒアリングで使っている共通の10問と、制作物ごとの追加質問を紹介します。
質問文だけでなく、各質問ごとに、なぜ聞くのか、返ってきた回答を私がどのように読みとっているのか、曖昧な場合に何を聞き返すのかまで、架空の回答例を使って具体的に解説していきます。
記事の最後には、そのまま使えるヒアリングシートもお付けしています。


ここから読める内容(目次)
- ヒアリングを「方向性」と「仕様」の2層で考える理由
- 全制作物に共通する10の質問(意図・想定回答・読み解き方・追加質問つき)
- 私が10の質問からデザインアイデアとして受け取ったこと
- 制作物ごと(ロゴ/名刺/チラシ・メニュー)に追加している質問
- 回答が曖昧なときの、6つの切り返しサンプル(サンプル文付き)
- 提案前の認識合わせで「イメージと違う」を防ぐ方法(サンプル文付き)
- 特典ヒアリングシートの使い方とダウンロード
長めの内容ですが、最初から全部覚えようとしなくて大丈夫です。
まずは自分が今抱えている案件、または直近で受けそうな案件(ロゴなら「ロゴで追加する質問」)から拾い読みしてもらえたら、実践しやすいと思います。

